医療コラムColumn
ヨナハ丘の上病院で新生児室と発達支援外来を担当している新生児科医の松田です。
今回は赤ちゃんの睡眠と夜泣きについて簡単にお話します。
この時期の赤ちゃんは3時間ごと1日8回のウルトラディアンリズムで生きています。
「授乳のあと2.0~2.5時間ほど眠る」を1日8回繰り返すことが多いようです
よく眠るタイプの赤ちゃんは1日に合計で20時間くらい眠っていることもあります。
この時期から赤ちゃんは1日8回のリズムではなく、お母さんが持つ「昼は起きて夜に眠る」の概日リズム (サーカディアンリズム) に合わせようとし始めます。
この時期にはだんだんと授乳間隔が不規則になってきて、生後3ヶ月になると夜の20~22時頃から6~8時間くらい続けて眠るようになります。
母乳で哺育していればお母さんが毎朝6時頃に朝日を浴びると夜の20~22時頃には母乳にメラトニンという催眠ホルモンが分泌されるので、その時間帯に赤ちゃんが速やかに眠り始めることを期待できます。
母乳哺育についてはこちらのページで説明していますので、こちらも合わせてお読みいただければ幸いです。
新生児の環境温は一般的におむつ一枚で裸ん坊のときは28℃くらいが適温で、産着を着せてバスタオルを掛けて眠らせたときが23~24℃とされています。
湿度は35~40%以上を保つと気道粘膜が安定してくしゃみや鼻水を出しにくくなると考えられています。
赤ちゃんが「頭部や上半身をやや高くしたうつ伏せの姿勢」を好むことはNICUで働くスタッフにはよく知られた事実で、かつては保育器で育てる早産の赤ちゃんはみんなこの姿勢でした。
この姿勢の方が落ち着きやすく、呼吸が楽で、栄養物の治まりがよかったからです。
最近は発達を促すケアならびに頭蓋変形を避ける目的でさまざまに工夫された体位変換が推奨されていますが、赤ちゃんがうつぶせ寝を好むことは今も昔も変わらないようです。
生後4カ月過ぎまでは緊張性迷路反射という「うつ伏せ姿勢のときに腕で頭と胸を持ち上げてお尻を上に突き上げる」姿勢反射が出やすい時期です。
この抗重力姿勢を使って赤ちゃんは体の伸筋群を鍛えて、首のすわり、お座り、這い這いができるようになります。
また、生後3ヶ月を過ぎると視覚がカラーでピントが合うようになり、首が据わってくるため、視野が広がる縦抱きやお座り抱っこを好むようになります。
ですから、赤ちゃんが縦抱きを好んで抱っこされたままお母さんの胸でうつぶせ寝で眠るのは自然の成り行きではないかと感じています。
赤ちゃんはおしゃべりできないので泣いている理由を説明してくれません。
ですから「まだ飲みたいのか」「飲み過ぎて苦しいのか」「便意が不快なのか」「おむつが蒸れてイヤなのか」などと推測しながらみなさんの経験値を高めていくしかないのです。
結構たいへんですけど楽しい作業でもありますよね。
じつは生後0~2ヶ月までの赤ちゃんは「快と不快」によく反応するので、気持ちよいと大人しくなって不快なことがあると泣きだします。
それが3~4ヶ月になると情動が発達して喜怒哀楽がハッキリしてくるので、楽しいときはキャッキャと笑って悲しくなると涙を流して泣くようになります (発達心理学では「心の窓が開く時期」と呼ばれています)。
あやしてあげると大喜びするので、この時期はお母さんが赤ちゃんの発達に手応えを感じ始める時期です。
生後0~1カ月の赤ちゃんは1日8回のウルトラディアンリズムで生きていますから、空腹で泣くのはだいたい3時間に1回で、それ以外のタイミングで泣いているときはたいてい「甘え泣き」のようです。
赤ちゃんは賢くて「お母さん」と「お母さん以外の人」を区別して態度を変えることが知られています。
なので、お母さんの気配を察知すると、空腹でなくても泣き続ける「甘え泣き」で抱っこを求めます (おそらく悲しくて泣いているのではなくてお母さんにトークを求めているのでしょう)。
反対にお母さん以外の人の抱っこでは「この人の腕の中で泣いてもおっぱいは出ないし…」と感じるのか、すぐに大人しくなることが多いのです。
甘え泣きにもすべて対応しているとお母さんは心身ともに疲れ切ってしまいますから、甘え泣きかなと感じたら、お母さん以外の方 (お父さんやお婆ちゃん) が抱っこしてお母さんの気配を弱めてあげれば赤ちゃんは眠りやすくなるかも知れません。
それとともに「泣いたら泣き止ませなきゃ」というお母さんらしい母性特有の心持ちも少しゆるめてください。
これには赤ちゃんが好む姿勢や感覚を知ることが大切です。
ポイントは「丸く抱っこする」「1/fリズムで揺する」「吸啜 (きゅうてつ) 反射させる」の3つです。
赤ちゃんは「丸く抱っこ」してあげると大人しくなります。
首を胸の方に少し傾けて、背中と腰を丸めて、手足も曲げたいわゆる「くるまった姿勢」です。
お母さんのお腹の中にいたときと同じ姿勢になるためなのかたいていはこれで大人しくなります。
逆に首を背中側に傾けると緊張性迷路反射による反り返りの姿勢になって泣き止めないことが多いようです。
赤ちゃんは「1/fゆらぎ」という振動を好みます。
そよ風や波打ちぎわでゆらいでいる音がその代表です。
お母さんの心臓の鼓動や鼻歌リズムにも1/fゆらぎが含まれているので、そうしたリズムで揺すったり歌いかけたりすると赤ちゃんは眠りやすくなります。
自動車のエンジンの振動も1/fゆらぎなのでドライブに連れ出すとほとんどの赤ちゃんは眠り始めます。
そのために1/fゆらぎで揺らすスイングラックが市販されているほどです。
赤ちゃんは吸啜反射でチュパチュパしているときには泣きません。
なので、おしゃぶりをしゃぶらせて眠り込ませて、眠ったらおしゃぶりを外すのも有効です。
手元におしゃぶりがなければ哺乳瓶のゴム乳首にガーゼを固く詰めたものでも代用できます (NICUではよく使います)。
それもなければ短時間であれば、お母さんの小指の爪のない方を赤ちゃんの口の中で上顎にくっつけて吸わせることでも代用できます。
よく泣く赤ちゃんはそれだけ元気な証拠であり、お母さんとのつながりが強い赤ちゃんともいえます。
きっと育て甲斐があるでしょう。
ヒトの睡眠では夢を見るまどろみ (REM睡眠) と深睡眠 (non-REM睡眠) を繰り返しています。
生後0~3ヶ月頃の赤ちゃんはまどろみで眠り始めて、まどろみで目覚めるのが特徴で、まどろみ睡眠のときに半覚醒して寝ぼけたり泣いたりうなったりすることが多いと言われています。
また、赤ちゃんはまどろみ睡眠中に脳をアップデートしていると考えられているので、夢を見ながら起きていたときの悩みごとを解決しているのかも知れません。
どうか「生まれたばかりなのに悩みごとができてたいへんだね」とヨシヨシしてあげて下さい。
ところで新生時期の赤ちゃんは顔を真っ赤にしてよくうなっていますが、成長とともに生後1~2ヶ月には自然に認められなくなりますのでご安心下さい。
「赤ちゃんがうなる」に関してはこちらの記事の説明が丁寧で詳しいので参考になると思います。
以上です。
赤ちゃんの睡眠・夜泣きで不安なときは、どうぞ遠慮なくお気軽に小児科外来を受診してください。
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