医療コラムColumn
ヨナハ丘の上病院で新生児室と発達支援外来を担当している新生児科医の松田です。
今回は子育ての悩みどころのひとつとして赤ちゃんの向きぐせによる頭蓋変形についてお話します。
お産が始まる前の1~4週間、赤ちゃんはお母さんの骨盤内に頭を入れて固定させます。
このとき正面ではなく横を向いて固定されるので、生まれた後も「気持ちよかったお母さんのお腹の中で向いていた方向」が好きになるようです。
産道を通って子宮外に出るときに胎児の先進部は後頭部になるので、産道に圧迫されて新生児の頭は後ろに出っ張っています。
そうすると生まれた後は仰向けで正面を向くと不安定になるので、赤ちゃんは左右どちらかに首を向けた横向きの姿勢を好みます。
新生児期は首がまだすわっていないので反対側を向くには力不足なのです。
生後0~4ヶ月にはいったん横を向いてしまうと、その方向の手足を伸ばして反対則の手足を曲げるという姿勢反射 (非対称性筋緊張性頚反射, ATNR) が出現します。
これが出ると反対側を向きにくくなるので、反対側を向かせたいときはこの姿勢反射が消えているときに体位変換するとよいでしょう。
タオルを丸太状に丸めた肩枕 (径4~5cmくらい) を赤ちゃんの肩の下に入れて、肩の位置を少し上に (2~3cmくらい) 持ち上げてあげて下さい。
こうすると赤ちゃんは真横ではなく斜め横を向くようになるので、自力でも左右に向きやすくなります。
この姿勢 (sniffing position) は気道の通過がスムーズになるので赤ちゃんが呼吸しやすいという利点もあります。
後頭部にドーナツ枕を当てれば上記の姿勢 (sniffing position) を保ちやすくなるので、頭蓋骨の片方だけが平坦になるのを防ぎやすくなります。
頭から背中と腰にかけて丸太状に丸めたタオルを当てて約45度の半横臥位にすると、赤ちゃんは頭を真横ではなく斜め横を向いた姿勢を保ちやすくなります。
気付いたときに左右交互に半横臥位にすれば頭蓋骨の片方だけが平坦になるのを防ぎやすくなります。
日本人のお母さんと新生児の約半数がビタミンD不足を指摘されています。
ビタミンDが不足すると骨の材料になるカルシウムやリンの消化管吸収が低下するため、赤ちゃんは頭蓋骨が柔らかくなる頭蓋ろうになってしまい、これが頭蓋骨変形を悪化させる要因になります。
母乳栄養の場合はお母さんが青魚・しらす干し・鮭・キクラゲ・椎茸などの適量摂取を心がけて下さい。
母乳哺育については、こちらも参考にして頂けましたら幸いです。
その理由は2つです。
ひとつは生後4ヶ月頃から首がすわってくるので仰向けで左右対称の姿勢を保てるようになるからです。
もうひとつはこの頃から左右非対称の姿勢を強制する非対称性筋緊張性頚反射 (ATNR) が弱まるからです。
赤ちゃんは生後4ヶ月までは多かれ少なかれ頭の形が左右非対称になります。
けれども、頭蓋骨はまだ柔らかくその縫合もゆるいのでほとんどの赤ちゃんは生後10ヶ月頃には左右非対称が目立たなくなります。
成長著しい脳が内側から均等に押し直してくれるのと、寝返り、お座り、這い這いが始まれば重力が左右均等にかかるようになるからではないかと考えられています。
左右を交互に向かせるケアはかなり大変なので、頭蓋変形はある程度は赤ちゃんの自然の回復力に期待してよいと思います。
ただし、後頭部が真っ平らになる「ゼッペキ (絶壁)」は自然には治りにくいので、左右差よりはゼッペキ(絶壁)の予防を意識したほうがよいでしょう。
頭蓋骨変形の病気で頭蓋早期癒合症というめずらしい病気があります。
頭蓋骨の変形が目立って顔立ちや耳の位置に左右差がありそうなときは、どうぞ遠慮なく早めに小児科外来を受診してください。
これが疑われたときには頭蓋骨の矯正ヘルメットや手術療法が可能な施設を紹介させて頂きます。
どうぞ遠慮なくお気軽に小児科外来を受診してください
ヨナハ丘の上病院の小児科では、赤ちゃんの姿勢保持のケアについて一緒に考えさせて頂いています。
頻度はまれですが、頭蓋縫合早期融合症や発育性股関節形成不全 (先天性股関節脱臼) などもスクリーニングしています。
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